ブルーオーシャン戦略レッドオーシャン経営戦略差別化市場創造

ブルーオーシャンの見つけ方|5ステップ・ERRCグリッド・戦略キャンバスで実践する市場創造

ブルーオーシャンの具体的な見つけ方を5ステップで解説。業界の常識を疑う→非顧客を分析する→代替産業を参照する→ERRCグリッドで設計する→価値曲線で検証する、という実践手順とシルク・ドゥ・ソレイユ・メルカリ等の事例を紹介します。

公開日 |更新日 |11分で読めます

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「競合と同じ市場で戦い続けることに、本当に意味があるのか」——価格競争が激化し、広告費をかけても獲得単価が上がり続ける状況に直面したとき、多くの経営者・PMがこの問いにたどり着きます。

そのような問いへの一つの答えが、ブルーオーシャン戦略です。競争のない市場空間を自ら創り出すことで、価格競争や消耗戦から脱出するための思考フレームワークです。

本記事では、ブルーオーシャンの見つけ方を5ステップで具体的に解説します。「業界の常識を疑う→非顧客を分析する→代替産業を参照する→ERRCグリッドで設計する→価値曲線で検証する」という手順を中心に、ブルーオーシャン戦略の定義・事例・守り方まで一気に理解できるように構成しました。


ブルーオーシャン戦略とは

定義

ブルーオーシャン戦略(Blue Ocean Strategy)は、INSEAD教授のW・チャン・キムレネ・モボルニュが2005年に発表した経営戦略論です。

「血で染まった赤い海(レッドオーシャン)」で既存の競合と戦うのではなく、まだ誰も参入していない「青い海(ブルーオーシャン)」を創り出し、競争を無意味にすることを目指します。

レッドオーシャンとの違い

項目 レッドオーシャン ブルーオーシャン
市場 既存の市場空間で競争 競争のない市場空間を創造
目標 競合を打ち負かす 競争を無意味にする
価値 コストと差別化はトレードオフ コストと差別化を同時に実現
顧客 既存の需要を奪い合う 新たな需要を生み出す

レッドオーシャンでは「いかに競合より安くするか」「いかに機能を追加するか」という消耗戦になりがちです。一方、ブルーオーシャン戦略は「そもそも何を争っているのか」を問い直すことで、まったく異なる価値曲線を描くことを目指します。


ブルーオーシャンの代表的な事例

Cirque du Soleil(シルク・ドゥ・ソレイユ)

キム&モボルニュが書籍の冒頭で取り上げた最も有名な事例です。従来のサーカスは、動物ショーや有名スターに高額なコストをかけながら、縮小する市場で競合同士が戦っていました。

シルク・ドゥ・ソレイユは「動物」「有名スター」「複数のリング」を廃止し、代わりに演劇的なテーマ性・芸術性・ライブエンターテインメントとしての完成度を高めました。ターゲットをサーカスの非顧客である「大人のビジネスパーソン」に設定し、チケット価格はブロードウェイ並みに引き上げました。コストを下げながら収益を上げるという、従来のトレードオフを破った事例です。

任天堂 Wii

ゲーム業界ではソニー(PlayStation)やマイクロソフト(Xbox)が高性能グラフィックと豊富なタイトルを武器に争っていました。任天堂はその戦いから降り、「ゲームをしない層(非ゲーマー)」に目を向けました。

Wiiは性能よりも「体を動かす直感的な操作性」を重視し、家族全員・高齢者・女性が楽しめるゲーム機として新たな市場を創造しました。

Netflix(初期のDVDレンタル事業)

従来のビデオレンタル店はレンタル期間・延滞料・在庫数で争っていました。Netflixは延滞料をなくし、月額定額制・郵送配送モデルを導入することで、全く異なる価値提案を行い既存プレイヤーとの競争を回避しました。


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4つのアクションとERRCグリッド

ブルーオーシャン戦略の核心は、業界の常識として当たり前に組み込まれている要素を再構成することにあります。そのためのツールがERRCグリッドです。

アクション 問い 目的
Eliminate(排除) 業界が当然としてきた要素のうち、取り除くべきものは何か? コスト削減・複雑性の排除
Reduce(削減) 業界標準と比べて大幅に減らすべき要素は何か? コスト削減・選択と集中
Raise(増加) 業界標準と比べて大幅に高めるべき要素は何か? 顧客価値の向上
Create(創造) 業界が提供してこなかった、新たに付け加えるべき要素は何か? 新しい需要の創造

ERRCグリッドのポイントは「全部やろうとしない」ことです。排除・削減によってコストを落とし、増加・創造によって顧客価値を高めることで、コストと差別化のトレードオフを打ち破ります。

シルク・ドゥ・ソレイユのERRCグリッド(適用例)

シルク・ドゥ・ソレイユがどのようにERRCグリッドを使ったかを整理すると、戦略の具体的なイメージが掴みやすくなります。

アクション 要素
Eliminate(排除) スター出演者・動物ショー・複数リング同時進行・アリーナ形式
Reduce(削減) 笑いと驚きのレベル(スタント依存を下げる)・テント外での屋台販売
Raise(増加) 演技の技術的完成度・施設の快適さ・一会場あたりの演目数
Create(創造) テーマ性・洗練された演出・多様なプログラム・ブロードウェイ的な物語

この整理が示すのは、「コストのかかる要素を思い切って捨て、新たな顧客層が求める価値に集中投資する」というシフトです。排除したスター出演者や動物ショーのコストを、演出の質と施設体験に再配分することで、チケット単価を大幅に引き上げながら利益率を改善しました。

自社のビジネスにERRCグリッドを適用する際には、まず「業界で当たり前とされているコスト構造」をリストアップすることから始めるとよいでしょう。コスト全体に占める比率が高い順に並べ、「これを排除したら顧客はどれだけ困るか」を検証していくと、捨てられる要素が見えてきます。


ブルーオーシャンを見つける5ステップ

ブルーオーシャンは「たまたま思いつく」ものではなく、体系的な手順で探索できます。以下の5ステップが基本的な進め方です。

ステップ1:業界の常識を疑う

最初の問いは「この業界で当たり前とされていることは何か?」です。価格設定・機能・流通チャネル・顧客層など、長年変わっていない慣習をリストアップします。「なぜそれをやっているのか」と問い続けることで、ERRCグリッドのヒントが見えてきます。

ステップ2:非顧客を分析する

既存顧客の満足度を高めることに集中しすぎると、市場の外側にいる「非顧客」を見逃します。キム&モボルニュは非顧客を3層に分類しています。

  • 第1層:あなたの製品を最低限使っているが、すぐに離れる可能性がある層
  • 第2層:あなたの製品を意識的に選ばない層(競合を使っているか、使っていない)
  • 第3層:あなたの業界にまったく無縁だと思っている層

ブルーオーシャンは多くの場合、第2層・第3層の非顧客を取り込むことで生まれます。

ステップ3:代替産業を参照する

顧客は同じ業界の競合だけでなく、「同じ目的を達成するための別の手段」も比較しています。移動手段を選ぶ際に電車と飛行機を比較するように、代替産業を参照することで、自社に取り込める要素が見えてきます。

なお、市場の空白地帯を視覚的に把握するにはポジショニングマップを活用した分析が有効です。競合の分布と「誰も取っていない座標」を把握することで、差別化の方向性が具体化しやすくなります。

空白領域を探すうえでは、競合の「撤退シグナル」や「注力領域の変化」をリアルタイムで把握することも重要な手がかりになります。競合がある機能や価格帯から手を引き始めたとき、そこには空白が生まれる可能性があります。競合サイトのコンテンツ変化・料金ページの更新・採用情報の変動といった公開情報を継続的に観察することで、空白地帯の候補を早期に発見できます。Compatoのような競合監視ツールを活用すると、こうした変化を自動で検知できます(無料プランあり・クレジットカード不要)。

ステップ4:ERRCグリッドで設計する

ステップ1〜3で得たインサイトをもとに、ERRCグリッドを作成します。「どの要素を排除・削減してコストを下げるか」「どの要素を増加・創造して新しい価値を提供するか」を明確にします。

重要なのは、排除・削減と増加・創造のバランスです。創造だけに集中するとコストが膨らみ、排除だけに集中すると顧客価値が失われます。

ステップ5:新しい価値曲線を検証する

ERRCグリッドを描いた後、競合との「価値曲線(バリューカーブ)」を比較します。ブルーオーシャン戦略が成立している状態とは、自社の価値曲線が競合と明確に異なる形状を持っていることです。曲線が似ていれば、まだレッドオーシャンの中にいる可能性が高いです。

戦略キャンバスの描き方

価値曲線を可視化するツールが「戦略キャンバス(Strategy Canvas)」です。横軸に業界の競争要素(価格・機能数・サービス速度・デザイン性など)を並べ、縦軸に各要素の提供レベルを取り、競合各社と自社のスコアを折れ線グラフで描きます。

実際に描いてみると、「競合と自社の曲線がほぼ同じ形をしている」という状況に気づくケースが多いです。この状態こそがレッドオーシャンのシグナルです。

戦略キャンバスを有効に活用するためのポイントは以下の3点です。

  1. 競争要素を業界外から借りる:競合が使っていない軸(体験の感情的価値・環境負荷・購入後サポートの深さ等)を横軸に加えることで、自社の独自性が浮き上がることがあります
  2. ターゲットセグメントごとに描く:同じ業界でも、顧客セグメントが異なれば評価する要素も変わります。セグメント別に戦略キャンバスを描くと、特定のセグメントでのブルーオーシャンが見えやすくなります
  3. 四半期に一度更新する:競合の施策変化・新規参入・技術変化によって曲線は動き続けます。定点観測的に更新することで、自社のポジションがいつレッドオーシャン化しつつあるかを早期に察知できます

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ブルーオーシャンが長続きしない理由と対策

ブルーオーシャンを見つけたとしても、それが永続するわけではありません。主なリスクは2つあります。

リスク1:競合の追随

新しい市場が魅力的に見えれば、競合は必ず追随してきます。Wiiの成功後、ソニーはPlayStation Move、マイクロソフトはKinectを投入しました。追随が始まった時点で、そのブルーオーシャンはレッドオーシャンへの変化が始まっています。

対策としては、持続的な競争優位性の構築が不可欠です。ネットワーク効果・スイッチングコスト・ブランド資産・特許などのバリアを積み上げ、追随コストを高める必要があります。

リスク2:市場の縮小・消滅

創り出した市場が技術変化・社会変化によって縮小するリスクもあります。DVDレンタルによるNetflixのブルーオーシャンも、ストリーミングへの移行という変化に直面しました(Netflixは自らカニバリゼーションを起こすことで生き残りました)。


国内企業におけるブルーオーシャン戦略の事例

ブルーオーシャン戦略は海外の大企業だけの話ではありません。日本市場においても、この思考を体現した事例は複数存在します。

メルカリ(フリマアプリ)

2013年のメルカリ登場以前、中古品売買の主戦場はヤフオクが独占していました。ヤフオクは出品・落札ともに会員登録と手数料が必要で、オークション形式のため「いつ売れるかわからない」という待ち時間が生じていました。

メルカリはここで「非顧客」に着目しました。ヤフオクを使わない理由を分析すると、「操作が複雑」「プロっぽい出品者が多くて参入しにくい」「待ち時間が長い」という声が浮かびました。これを受け、メルカリは固定価格制・スマホ完結・写真1枚から即出品というシンプルな設計を採用しました。ERRCグリッドで言えば、オークション機能の排除・会員登録の摩擦削減・価格決定プロセスの簡略化です。

結果として、これまでフリマ市場と無縁だった主婦層・学生層を取り込み、2023年時点で月間利用者数2,000万人超のプラットフォームへと成長しました。

ライザップ(パーソナルトレーニングジム)

フィットネス業界は月額1〜2万円のジムが中心で、「安く通える」「設備が充実している」という軸で競争が行われていました。しかしその市場で多くの人が「続かない」という問題を抱えていました。

ライザップは「通い続けている人」ではなく「ジムに通えなかった人・リバウンドした人」という非顧客に注目し、結果保証という全く新しい価値を提案しました。月額数十万円という高単価を設定しながら、2カ月で結果が出なければ全額返金するというモデルは、フィットネス業界の常識を覆しました。排除したのは「豊富な設備」「低価格」であり、創造したのは「専任トレーナーによる完全伴走」「食事管理の徹底」「コミット感を高める高額設定」です。

スターバックス(コーヒーチェーン)

スターバックスが日本に上陸した1996年当時、コーヒーショップ市場はドトールを筆頭とした低価格チェーンが席を占めていました。スターバックスは価格ではなく「場所としての価値」を競争軸にしました。禁煙・ソファ席・名前を呼ばれる体験・カスタマイズメニューというERRCを徹底し、コーヒーを売るのではなく「サードプレイス(第三の居場所)」を売るという価値提案を確立しました。


競合の動向を監視してブルーオーシャンを守る

ブルーオーシャンを守るうえで見落とされがちなのが、「競合の動きをリアルタイムで把握する」という実務的な対策です。

競合が自社の市場に参入しようとしているシグナルは、Webサイトのコンテンツ変化・採用情報・プレスリリースといった公開情報に現れることが多いです。これらを手動でモニタリングするのは限界がありますが、競合サイトの変更を自動検知する仕組みを導入することで、追随の早期発見が可能になります。

競合が参入を検討し始めた段階で把握できれば、製品・価格・マーケティングの調整を先手で打てます。ブルーオーシャン戦略は「見つけて終わり」ではなく、その後の継続的なモニタリングと進化が不可欠です。


まとめ

ブルーオーシャン戦略のポイントを整理します。

  • 定義:競争のない市場空間を自ら創造し、コストと差別化のトレードオフを破る戦略
  • レッドオーシャンとの違い:競合を打ち負かすのではなく、競争を無意味にすることを目指す
  • 4つのアクション:Eliminate・Reduce・Raise・CreateのERRCグリッドで価値曲線を再設計する
  • 見つけ方:業界の常識を疑い→非顧客を分析し→代替産業を参照し→ERRCグリッドで設計する
  • 守り方:競争優位性を積み上げながら、競合の追随を早期に検知して先手を打つ

ブルーオーシャンは偶然生まれるものではなく、体系的な思考と継続的な観察によって意図的に創り出すものです。自社の市場と競合の動きを俯瞰的に捉え、「どこで戦うか」を戦略的に選び続けることが、持続的な成長への道筋となります。

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Compato 編集部

競合サイト監視ツール「Compato」の開発・運営チームです。市場を先読みするための競合インテリジェンス知識を、BtoBセールス・PMM・CSに向けて発信しています。

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