直接競合・間接競合・代替競合の違いとは|3種類の整理方法と間接競合の具体例
直接競合・間接競合・代替競合の定義と違いをわかりやすく解説。業種別の間接競合・代替競合の具体例と、競合分析で3種類を使い分ける方法を紹介。
競合分析を「同じカテゴリのサービスを並べるだけ」で終わらせていないだろうか。直接的な競合他社しか見ていないと、ユーザーが実際に選んでいる「別の解決手段」を見落とし、戦略の穴が生まれる。競合を直接競合・間接競合・代替競合の3種類に整理することで、自社のポジショニングと差別化の方向性がはじめて明確になる。
直接競合・間接競合・代替競合とは何か
3種類の定義
競合は「誰と同じ顧客を奪い合っているか」という視点で分類できる。ターゲット顧客と提供価値の2軸で整理すると、以下のように定義できる。
| 種類 | ターゲット顧客 | 提供価値・解決手段 | 例 |
|---|---|---|---|
| 直接競合 | 同じ | 同じ | 同カテゴリの競合サービス |
| 間接競合 | 同じ | 異なる | 別カテゴリだが同じニーズに応えるサービス |
| 代替競合 | 同じ | 全く異なる手段 | ツールや習慣など非プロダクト的な解決策 |
直接競合は、同一市場で同一の解決策を提供する企業・サービスだ。「競合」と聞いて最初に思い浮かべるのがこれにあたる。プロジェクト管理ツールならAsanaとNotionが直接競合関係にあたる。
間接競合は、同じ顧客ニーズを満たすが、手段やカテゴリが異なるサービスだ。顧客が「どちらかを選ぶ」関係にあるため、競合として意識する必要がある。プロジェクト管理ツールにとっての間接競合は、チャットツール(Slack)やスプレッドシート(Googleシート)になる場合がある。
代替競合は、同じ課題を「プロダクト以外の手段」で解決する選択肢だ。ユーザーがそもそも「ツールを使わない」という選択をするとき、その理由が代替競合にあたる。
3種類を区別する意味
直接競合だけを見ていると、「なぜユーザーがツールを使わないのか」「なぜ別のカテゴリに流れるのか」が分からなくなる。間接競合と代替競合まで把握することで、自社が戦うべき本当の市場が見えてくる。
間接競合の具体例(業種別)
間接競合は「同じ課題を、別の手段で解決しているサービス」だ。業種別に整理すると理解しやすい。
BtoB SaaS(プロジェクト管理ツールの場合)
- 直接競合: Asana、Monday.com、Backlog
- 間接競合: Slack(タスクをメッセージで管理)、Notion(ドキュメントにタスクを混在)、Googleスプレッドシート(手動管理)
- 代替競合: ホワイトボードによる物理的な付箋管理、口頭での進捗共有
プロジェクト管理ツールの導入を検討しているチームが最終的にSlackのリマインダー機能で代替した場合、Slackは間接競合として機能している。
飲食・フードデリバリー(弁当宅配サービスの場合)
- 直接競合: 同じ価格帯の他社弁当宅配
- 間接競合: Uber Eats・出前館(スポット注文型)、コンビニ弁当(セルフ調達)、社員食堂
- 代替競合: 自炊、外食、断食(ダイエット目的ユーザーの場合)
定期弁当サービスにとってのコンビニは、「毎日のランチをどうするか」という同じ課題を解決している間接競合だ。
EC・D2C(サプリメントブランドの場合)
- 直接競合: 同カテゴリの競合サプリブランド
- 間接競合: 薬局・ドラッグストアのプライベートブランド、フィットネスジムのオリジナル商品
- 代替競合: 食事改善(栄養を食事で補う)、医療機関でのサプリ処方
教育・学習(オンライン英会話サービスの場合)
- 直接競合: 同形式の他社オンライン英会話
- 間接競合: YouTube英語学習チャンネル(無料)、Duolingo(アプリ学習)、英語学習書籍
- 代替競合: 海外留学、英語圏への転職・移住、翻訳ツール(学習を諦めて翻訳で代替)
間接競合の整理は、BtoB競合調査の手法と組み合わせることで、より体系的に進められる。
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代替競合の具体例(見落とされやすい代替手段)
代替競合は「そのプロダクトカテゴリ自体を使わない選択肢」だ。見落としやすいが、特に新しい市場を開拓するプロダクトにとって最大の障壁になりえる。
よくある代替競合のパターン
「人がやる」パターン
- CRMツールの代替: 営業担当者が手帳・記憶で顧客管理
- 経費精算ツールの代替: 経理担当者が手作業でExcel入力
- 採用管理ツールの代替: 人事が個別にメール管理
「外部に委託する」パターン
- 社内デザインツールの代替: デザイン会社・フリーランサーへの外注
- コンテンツ制作ツールの代替: コンテンツ制作代行サービス
「やらない・後回し」パターン
- 競合調査ツールの代替: 競合分析そのものをしない
- サイト監視ツールの代替: 問題が起きてから対応する(事後対応)
「やらない」という選択が競合になる場合、プロダクトの「やらないことのコスト」を可視化することが獲得の鍵になる。
3種類を整理したあとにやること
優先順位のつけ方
すべての競合を等しく監視・対策する必要はない。以下の基準で優先順位をつけるとよい。
- 顧客の乗り換え先として頻繁に名前が出るか(CSチームやユーザーインタビューで確認)
- ターゲット顧客のジョブを同じく解決しているか(Jobs to Be Done視点)
- 市場シェアや資金力でスケールする可能性があるか
直接競合は常に監視対象に入れるとして、間接競合の中から「乗り換えが起きやすいもの」を2〜3社選んで重点監視する体制が現実的だ。
監視対象と監視方法の決め方
整理した競合に対して、以下の軸で監視内容を設計する。
| 監視項目 | 直接競合 | 間接競合 | 代替競合 |
|---|---|---|---|
| 価格変更 | 必須 | 重要 | 不要 |
| 機能追加 | 必須 | 場合による | 不要 |
| マーケティング施策 | 必須 | 重要 | 参考程度 |
| ユーザーレビュー | 必須 | 重要 | 参考程度 |
競合のWebサイト更新・価格変更・機能追加を継続的にウォッチする仕組みを作ることで、戦略の修正タイミングを逃さずに済む。競合監視の自動化については、競合分析フレームワークの記事で詳しく解説している。
ポジショニングへの活用
3種類の競合を整理したあとは、自社の立ち位置を競合マップ上で可視化することが有効だ。どの競合と差別化するか、どのポジションを狙うかを明確にすることで、メッセージングや機能開発の方向性が定まる。ポジショニングマップの作り方は競合分析とポジショニングマップで解説予定だ。
まとめ
競合を直接競合・間接競合・代替競合の3種類に分けることで、見落としていた市場の動きが可視化される。特に間接競合と代替競合は、ユーザーが「なぜ自社を選ばないか」を理解するための重要な手がかりだ。
- 直接競合: 同カテゴリで同じ解決策を提供する企業
- 間接競合: 同じ課題を異なる手段で解決するサービス
- 代替競合: ツールを使わない・人が代替するなど非プロダクト的手段
この3種類を整理した上で、監視対象の優先順位をつけ、自社のポジショニングに反映させることが競合分析の実践的なゴールだ。競合分析は一度やって終わりではなく、市場の変化に合わせて継続的に更新していくプロセスだと捉えるとよい。
ジョブ理論(Jobs to Be Done)で競合を再定義する
3種類の競合分類をより精緻に行うための思考ツールが、クレイトン・クリステンセンが提唱した「ジョブ理論(Jobs to Be Done)」だ。ジョブ理論では、顧客が製品・サービスを「雇う(hire)」のは、特定の仕事(ジョブ)を片付けるためだと捉える。この視点に立つと、競合の定義が大きく変わる。
ジョブ視点で競合を見ると何が変わるか
たとえば「朝の通勤時間を退屈せずに過ごしたい」というジョブを持つ人が、Podcastアプリを使っているとしよう。このジョブを奪い合っているのは、競合の音声配信サービスだけではない。同じジョブを解決しようとするオーディオブック、Spotify、ラジオ、さらにはゲームアプリや読書まで競合になる。
つまり、ジョブ理論の観点では「同じカテゴリの競合サービス」よりも「同じジョブを満たす解決策全体」を競合として扱う。これが間接競合・代替競合を見つけるための最も効果的な思考フレームだ。
ジョブ分析の3ステップ
- ジョブの特定: 顧客インタビューやユーザーレビューを分析し、「ユーザーが本当に達成したいこと」を言語化する。「ツールを使いたい」ではなく「チームの進捗を把握してプロジェクトを成功させたい」という形で定義する
- ジョブの解決策リストアップ: そのジョブを解決しうる手段をすべてリストアップする。SaaS、アナログ手段、外注、「やらない」選択まで含める
- 競合の分類: リストアップした解決策を直接・間接・代替の3種類に振り分ける
このプロセスを経ることで、「どの競合から顧客が流れてきているか」「どの競合に顧客が流れていくか」が具体的に見えてくる。
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スタートアップが「代替競合」を軽視すると何が起きるか
PMF(プロダクトマーケットフィット)前のスタートアップにとって、直接競合よりも代替競合のほうが事業の成否を左右することが多い。なぜなら、直接競合が存在するということはすでに「そのカテゴリにニーズがある」という証明になるが、代替競合しか存在しない市場では「ユーザーが既存の手段で十分に満足している可能性」と戦わなければならないからだ。
ケース1: 経費精算SaaS
中小企業向け経費精算SaaSを開発したスタートアップが、最初のターゲット企業50社にアプローチしたところ、断られた理由の多くが「Excelと経理担当者で十分回っている」だったとする。この場合の真の競合は同カテゴリの経費精算ツールではなく、「Excelと人手によるオペレーション」という代替競合だ。
この状況で正しい打ち手は、既存の競合ツールとの機能比較で優位性を主張することではない。「現在のExcel管理によって経理担当者が月に何時間費やしているか」「入力ミスによる損失額がどの程度か」を可視化し、現状維持のコストをユーザーに気づかせるコミュニケーションが効果的だ。
ケース2: 競合調査ツール
競合のWebサイト更新をモニタリングするツールを提供している場合、最大の競合は競合調査ツール同士の戦いではなく、「競合調査を定期的にやらない・後回しにする」という行動だ。多くの中小企業では、競合調査は担当者が気が向いたときにブラウザで確認する程度で、体系的な運用は行われていない。
この場合、ユーザーが「競合に先手を打たれた経験」や「価格変更を見逃して失注した事例」に共感できるメッセージングが獲得の鍵になる。代替競合を理解していれば、訴求の切り口が自然と変わる。
競合分類ワークショップの進め方
チーム内で競合の整理をするときに有効なのが、ホワイトボードを使った競合分類ワークショップだ。以下の手順で90分程度あれば実施できる。
ステップ1: 顧客ジョブの書き出し(20分)
付箋を使って、自社プロダクトが解決している「顧客のジョブ」を書き出す。メインジョブだけでなく、副次的なジョブも含める。複数のペルソナがある場合は、ペルソナごとに分けて整理する。
ステップ2: 解決策の全列挙(20分)
各ジョブに対して、「どんな手段で解決できるか」を思いつく限り書き出す。自社プロダクト、競合サービス名、アナログ手段、外注先、「やらない」まで含める。この段階では分類せず、まずすべてを網羅することを優先する。
ステップ3: 3種類への分類(20分)
列挙した解決策を直接競合・間接競合・代替競合の3つのグループに振り分ける。判断基準は「ターゲット顧客が同じか」「提供する価値・手段が同じか」の2軸だ。迷うものはいったん保留して、チームで議論する。
ステップ4: 優先度の設定(30分)
分類した競合を、以下の観点でスコアリングして優先度を決める。
- 乗り換え頻度: CSや営業チームへのヒアリングで「何から乗り換えてくる顧客が多いか」を確認する
- 市場規模・成長性: 間接競合がどれだけの顧客を抱えているか
- 自社との重複度: 同じターゲット顧客を狙っている度合い
優先度の高い競合から順に、定期的な監視体制を設計する。直接競合には週次モニタリング、優先度の高い間接競合には月次レビューを設定するのが現実的だ。
市場の変化で競合の種類が変わるケース
競合の分類は固定ではなく、市場の変化によって種類が変わることを頭に入れておく必要がある。
間接競合が直接競合に変わるケース
Notionは当初、ドキュメント管理ツールとしてリリースされ、プロジェクト管理ツールにとっては「間接競合」だった。しかし、タスク管理機能・データベース機能の強化によって、AsanaやJiraにとって直接競合に近い存在へと進化した。
SaaSのプロダクトロードマップ拡張によって、昨日の間接競合が今日の直接競合になることは珍しくない。競合分類は少なくとも半年に一度、見直しを行うのが望ましい。
代替競合が間接競合に変わるケース
生成AIの登場以前、コンテンツ制作ツール(ライティング支援SaaS等)にとって「人間のライターへの外注」は代替競合だった。ChatGPTをはじめとするAI文章生成ツールが登場したことで、この代替手段は急速に「間接競合」としての存在感を持つようになった。
代替手段が技術進化によって製品化されるケースは今後も続くと考えられる。特に生成AIの波は、多くの業界で「人がやっていた代替手段」をプロダクト化しつつある。代替競合の監視を怠ると、気づいたときには市場が変わっていたという事態につながる。
新規参入者が既存の間接競合を飲み込むケース
LINEが日本市場に普及した当初、ビジネスコミュニケーション市場での間接競合は電話や対面コミュニケーションだった。しかし法人向けLINE WORKSが登場し、Slackや他のビジネスチャットの直接競合として確立するまでに数年もかかっていない。
このように、間接競合の中にいる巨大なプラットフォーマーが、同じジョブを狙って「本丸」の市場に参入してくるリスクも常に考慮しておく必要がある。
競合分析を継続的なプロセスにするには
競合の3種類を整理しても、それが「一度やって終わり」のスプレッドシートになってしまうと価値が半減する。継続的に競合分析を更新するための仕組みづくりが重要だ。
定期レビューのサイクルを設計する
競合分析の鮮度を保つためには、更新タイミングを事前に決めておくことが重要だ。推奨サイクルの目安は以下の通りだ。
- 直接競合の価格・機能変更: 週次または変更検知時にアラート
- 直接競合のマーケティング施策: 月次レビュー
- 間接競合の動向: 四半期レビュー
- 代替競合・新興脅威の確認: 半期レビュー
レビューを形式化しすぎると形骸化するため、簡単に更新できる共有ドキュメントやツールを活用して運用コストを下げることが継続の鍵だ。
チーム全体で情報を集める体制を作る
競合情報の収集は、プロダクトマネージャーやマーケティング担当者だけに任せるのではなく、チーム全体で行うのが理想だ。営業担当者は「なぜ競合に負けたか」を最前線で聞いており、CSチームは「なぜ解約したか・乗り換え先はどこか」を把握している。この現場の声を定期的に吸い上げる仕組みを作ることで、机上の分析では気づけない間接競合・代替競合の動向が見えてくる。
競合のWebサイト更新や料金ページの変更を自動で検知する監視ツールを導入することで、変化を見逃さず、かつ担当者の調査工数を大幅に削減できる。
Compartoで競合の動向を継続的にウォッチする
直接競合・間接競合・代替競合を整理しても、各競合のWebサイト更新や料金変更を手動でチェックし続けるのは工数がかかる。Compartoは、競合のWebサイトを自動でモニタリングし、価格変更・新機能リリース・サービス内容の変更を検知した際にアラートを送るツールだ。
競合の種類ごとにモニタリング頻度を設定し、重要な変化が起きたタイミングで確認する体制を作ることで、競合分析を「一度やって終わり」から「継続的に更新されるインテリジェンス」へと変えることができる。
直接競合の監視はもちろん、間接競合として注目している企業のサービスページや価格ページを登録しておくことで、カテゴリをまたいだ動向把握が効率化される。